光るなら/Goose House
いまや、CM、アニメのタイアップなど、
ひっぱりだことなっている彼らを知っているだろうか。
それぞれシンガーソングライターとして活動している
彼らは週に一回、集まってUstream配信を行う。
その場所、そして彼らが”Goose House"である。
”Goose House”という名前の通りその場所は
歌に希望を込めた若者=Goose(ガチョウ)が集まり、
いつかはきれいな白鳥として飛び立つことを夢みる部屋(=House)である。
彼らは主にカバー曲を演奏し、うたう。
彼らによって再構成された曲は、オリジナルとは違った魅力をはなち
みる人、きく人に届けられる。
既存の曲を再構成して発信すること、それを受け取る私たちは
歌い手である彼らが、我々と同じ聴き手であることに気が付く。
その曲の魅力を十分に理解した演奏やうたは、
同時に彼らの魅力も引き出しながら私たちに届けられるのだ。
彼らが配信したカバーソングの動画はYouTubeに数多くアーカイブされ、
その再生回数は250,000を超えるものも多い。
アニメ「四月は君の嘘の」タイアップとなった
Goose Houseオリジナルソング「光るなら」は5,000,000再生を超える。
インターネットコミュニティの著しい普及は私たちに新たな文化や表現を与える。
YouTubeとニコニコ動画がほぼ同時期にサービスを開始したのは2006年、
ほんの10年も経たない前のことである。
その当時、利用者はある特定の
ーいわゆるオタク的あるいはアダルトなジャンルーコミュニティ利用者だった。
投稿されているものは
いまでは違法アップロードと呼ばれるアニメ動画や
そういったアニメの切り貼りに別の音楽をのせて再構成された
MADと呼ばれる動画などであった。
2007年、VOCALOID<初音ミク>の登場により、
そのオタクコミュニティは、いままで秘めていた才能を一気に開花させる。
初音ミクに歌を歌わせることは<調教>という言葉で表現され、
タグ付けと呼ばれるその動画をあらわすキャッチフレーズがつけられる。
人気の曲には<神調教><プロの犯行>などといったタグがつけられ、
またその曲に対して、イラストが描かれたり、アニメーションがつけられたりした。
曲をつくる制作者はP(プロデューサー)とよばれ、
人気なPが新曲をだすとランキングはすぐに上位にあがる。
現在、当時人気を誇っていたPは、
アーティストに楽曲提供をしたり、演奏家として、活躍している。
また、初音ミクを通じて作られた楽曲に対し、
生の人間が歌い直したり踊りをつけたりする新たな表現方法もはじまる。
<うたってみた><踊ってみた>とタグ付けされるそれらは、
新たな才能の発見の可能性となった。
「いいね!」された一つの曲を通じて才能を提供しあい、
色づき合っていく関係性。これはインターネットが生んだ結びつきである。
初音ミクをはじめ、ヒャダイン、super cell、でんぱ組inc.など、インターネットを媒介とするオタク的コミュニティからの発信、あるいはそれを利用していた受け手が発信者となる例は珍しくない。
しかし、それがいまの社会になじみ始めたのはごくごく最近のことだ。
既存のものを再構成し、発信するという表現が一般に評価されはじめるきっかけに
”Goose House”という存在があったことも少なからず関係しているだろう。
知らず知らず、水面下では刺激しあっている。
そしてまた、模倣から新しい表現が生まれ、新しい才能が発見されていく。
4月から全国ツアーがはじまる”Goose House”。
それぞれもシンガーソングライターとして自らの表現を続け、
Goose Houseとしても新しいアルバムをひっさげて全国をまわる。
カバー曲を歌う彼らはあくまで、歌が大好きな少年や少女と変わりない。
歌い手として、彼らはもうそれぞれが立派に羽ばたく美しい翼を持っている。
2015.2.22