Archive for 6月 2015

『シンプル・シモン』

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『シンプル・シモン』(2010)/アンドレアス・エーマン

北欧映画というものはあまりみたことがない。
しいていうなら「チェブラーシカ」と思ったが、あれはロシアだ。
となると、「ムーミン」か。


とにかくおしゃれだ。
アートワークにしろ、美術にしろ、衣装にしろ、なんにしろ。
なんだんだ北欧って。

そしてもう一言でいうと、好きだ。
私、この映画好きだ。


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「思い込み」というのは、やっかいだ。
それは人が生きていく上で指針にもなれば、障害にもなる。
人の心が壊れるのはどこからが病気でどこまでは病気じゃないなんて、
いつから決まって、病名がつけられたのか知らないけれど
ある程度、決めつけられると安心するのが人のようだと、
なんとなくはわかる。

以前、僕はアスペルガー症候群に憧れています。という人がいた。
彼らはに才能溢れているし、自分にはないものを持っている、と。

激しいこだわりや、記憶力、特別な才能、
自分が持っていないものや、自分にできないことをできる人に
「頭がおかしい」とか言ったりする。
「気が狂ってる」とか。

人にあわせられる、というのがこの世で一番重宝される才能だ。


「慣れる」というのは思い込みに似ている。
それは例えば、愛だとか、諦めということとも似ているかもしれない。


厄介で愛おしい『シンプル・シモン』
宇宙や数学をもっと好きになりたい。









『チャッピー』

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『チャッピー』(2015)/ニール・ブロムカンプ


世界一治安の悪い都市、ヨハネスブルグ。
警察はそこに「ロボット警官(=スカウト)」を導入する。
スカウトを導入したことにより、都市の犯罪は減少していく。

スカウトを開発、製造したテトラヴァール社では、
開発者のディオンが社内中から賞賛されていた。
その一方でディオンは、全く別の人工知能の開発に勤しんでいた。
自分で学び、成長する、知能をもったAIプログラム。
そしてその人工知能の開発はとうとう成功する。

しかし、上司はその人工知能のインストールを認めてはくれなかった。
「武器をつくる会社で、美術品がわかるロボットの話?」

ディオンは廃棄処分予定であったスカウトを一台盗み出し、
自分のつくった人口知能をそのスカウトにインストールしようとする…。


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この監督の映画を観るのは『第9地区』以来だ。
『第9地区』をみたときはなんだか悲しい気分になった覚えがある。
それはおそらく、大学の授業を思い出したからだ。
ヨハネスブルク、世界で一番治安が悪い都市の一つ。
Wikipediaにもそう書いてあるのでおそらくそうなのだろう。

自分にはどうにもできない事実をただつきつけれても、
どうすればいいかわからず戸惑うだけだ。
今、思えば私はあまりにも
『第9地区』をエンターテイメントとして観ていなかったのだろう。


『チャッピー』は素晴らしいエンターテイメントだ。
笑えるし、ちょっと泣ける。

キャラクターもすごくいい。
ストイックで生真面目な開発者。
プライドの高い憎悪で怒り狂うライバル。
利益だけしか追い求めない上司。
120%のギャングたち。

世の中には言葉でうまく説明できないことだらけだけれども、
言葉で説明できるのはとても素晴らしいことだ。
わかりやすくて、夢中になれる。


絶望の繰り返しの中、この映画には希望がある。
最後にわたしたちをきちんと救ってくれる。
監督のやさしさかな。